『ブロックチェーン・レボリューション』レビュー──タプスコット親子が描く未来
TL;DR
- 『ウィキノミクス』著者が描くブロックチェーンの社会変革ビジョン
- 金融、政府、企業──あらゆる領域への影響を包括的に分析
- 技術者だけでなくビジネスリーダー必読の一冊
著者:ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット
『ウィキノミクス』著者によるブロックチェーン論
ドン・タプスコットは、2006年の『ウィキノミクス』でWeb2.0時代の協働経済を予見した未来学者です。その彼が息子アレックスとともに執筆した本書は、ブロックチェーンが社会をどう変革するかを包括的に描いた野心作です。
タプスコット親子は、ブロックチェーンを「インターネット以来の最も重要な技術革新」と位置づけています。インターネットが「情報のインターネット」だったとすれば、ブロックチェーンは「価値のインターネット」を実現する──そのビジョンが本書の核心です。
読んだ当時の感想
野口悠紀雄氏の『ブロックチェーン革命』と併せて読みたい一冊です。日本と海外、両方の視点からブロックチェーンの可能性を理解できます。
私がこの本を読んだのは、野口悠紀雄氏の著作でブロックチェーンに興味を持った後でした。日本の視点だけでなく、グローバルな視点からブロックチェーンを理解したいと思い、本書を手に取りました。
信頼のプロトコル
本書の第一部では、ブロックチェーンを「信頼のプロトコル」として定義しています。従来、信頼は銀行、政府、弁護士などの仲介者によって担保されてきました。ブロックチェーンは、この信頼を技術で置き換えることを可能にします。
「トラストレス」という概念──第三者を信頼する必要がないシステム──が、なぜ革命的なのか。著者たちは、具体的な事例を交えながらこの本質を説明しています。
金融サービスの再構築
本書は金融サービスへの影響を詳しく分析しています。国際送金、証券取引、保険──これらの分野でブロックチェーンがもたらす変革が具体的に描かれています。
特に印象的なのは、「アンバンクド」(銀行口座を持たない人々)への影響です。世界には20億人以上の成人が銀行口座を持っていません。ブロックチェーンは、これらの人々に金融サービスへのアクセスを提供する可能性があります。
企業と組織の変容
本書は金融だけでなく、企業組織そのものの変容も論じています。DAO(分散型自律組織)という概念──経営陣なしに運営される組織──が詳しく解説されています。
これはオーストリア経済学の視点からも興味深いテーマです。ハイエクが論じた「自発的秩序」が、テクノロジーによって組織レベルで実現しうる可能性を示唆しています。
政府とデモクラシー
本書の後半では、政府やデモクラシーへの影響が論じられています。透明性の向上、投票システムの改革、公共サービスの効率化──ブロックチェーンが民主主義そのものを変える可能性が検討されています。
エストニアの電子政府の事例など、すでに実現している取り組みも紹介されています。技術と政治の交差点に関心がある読者には、特に興味深い内容でしょう。
課題と限界
本書はブロックチェーンを礼賛するだけではありません。スケーラビリティ、エネルギー消費、規制の不確実性──技術の課題と限界についても公平に論じられています。
特にガバナンスの問題──分散型システムにおける意思決定の難しさ──は、その後のビットコインやイーサリアムのコミュニティで顕在化した課題です。著者たちの洞察は的確でした。
こんな方におすすめ
- ブロックチェーンの社会的影響を包括的に理解したい方
- ビジネス戦略としてブロックチェーンを検討している方
- グローバルな視点からブロックチェーンを学びたい方
- テクノロジーと社会変革の関係に興味がある方
技術書としてではなく、社会論として読むべき一冊です。ブロックチェーンが私たちの社会をどう変えうるか──そのビジョンを得るために最適な書籍です。
関連書籍
※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。書籍の購入により、当サイトの運営をサポートいただけます。