『仮想通貨革命』レビュー──野口悠紀雄が予見した金融の未来

『仮想通貨革命』レビュー──野口悠紀雄が予見した金融の未来

TL;DR

  • 2014年出版、日本における仮想通貨解説書の先駆け
  • マウントゴックス破綻直後に書かれた、冷静かつ本質的な分析
  • 「なぜビットコインは革命的なのか」を経済学の視点から解明

著者:野口悠紀雄

2014年、すでに「革命」を予見していた

本書が出版されたのは2014年です。マウントゴックスが破綻し、「ビットコインは終わった」と多くの人が考えていた時期でした。しかし野口悠紀雄氏は、そのような短期的な出来事に惑わされることなく、ビットコインとブロックチェーンの本質的な革命性を冷静に分析しました。

その先見性は驚くべきものです。2017年の仮想通貨バブル、2020年代のDeFi(分散型金融)の台頭、企業によるビットコイン保有──野口氏が本書で描いた未来は、着実に現実のものになりつつあります。

読んだ当時の感想

野口悠紀雄氏の著作は、仮想通貨を学ぶ上での必読書です。特にこの『仮想通貨革命』は、ビットコインの本質を経済学の視点から解き明かした名著です。

私がこの本を読んだのは2017年の夏でした。すでに『ブロックチェーン革命』を読んでいましたが、そのルーツとなる本書に遡ることで、野口氏の仮想通貨に対する一貫した視点を理解することができました。

通貨とは何か──根本的な問い

本書は「通貨とは何か」という根本的な問いから始まります。金本位制の崩壊、不換紙幣の誕生、中央銀行による通貨発行──現代の貨幣制度がいかにして成立したかを振り返った上で、ビットコインがなぜ「革命」たりうるかを説明します。

野口氏が強調するのは、ビットコインが「政府なしに成立する通貨」であるという点です。国家権力によって価値が保証される法定通貨とは異なり、ビットコインは数学と暗号技術によって価値が担保されます。これは貨幣の歴史における根本的なパラダイムシフトです。

中央銀行制度への問い

本書で繰り返し論じられるのは、中央銀行制度の問題点です。インフレーションによる通貨価値の希釈、金融危機時の量的緩和、富の再分配への介入──これらの問題が、ビットコインという「対案」と対比されます。

野口氏は明確に述べませんが、ここにはオーストリア経済学の影響が感じられます。ミーゼスやハイエクが批判した中央銀行による通貨発行の独占──その問題意識がビットコインの設計思想と共鳴しているのです。

マウントゴックス破綻の意味

2014年2月のマウントゴックス破綻は、当時世界最大のビットコイン取引所の崩壊という衝撃的な事件でした。多くのメディアは「ビットコインの終焉」と報じました。

しかし野口氏は、この事件の本質を正確に理解していました。問題はビットコインというプロトコルではなく、取引所という「中央集権的な仲介者」にあった。ビットコインが分散型であるにもかかわらず、ユーザーが資産を中央集権的な取引所に預けていた──その矛盾が露呈した事件だったのです。

国際送金の革命

本書で詳しく論じられるのが、ビットコインによる国際送金の可能性です。従来の銀行送金では、数日の時間と高額な手数料が必要でした。ビットコインは、これを数十分、わずかな手数料で実現します。

野口氏は、これが途上国の労働者による送金(レミッタンス)を劇的に変える可能性を指摘しています。世界銀行のデータによると、送金手数料は平均して送金額の7%程度。ビットコインはこれを1%以下に削減できる可能性があります。

日本経済への示唆

野口氏は一貫して、仮想通貨が日本経済に与える影響を論じています。少子高齢化、生産性の低迷、財政赤字──これらの問題に対して、ブロックチェーン技術が解決策になりうると主張しています。

特に重要なのは、日本がキャッシュレス化で後れを取っているという指摘です。本書が出版された2014年時点で、すでに野口氏は日本のデジタル化の遅れを警告していました。その警告は、今も有効性を失っていません。

10年後の視点から

2014年から10年が経過した今、本書を読み返すと、野口氏の予見の正確さに驚かされます。ビットコインは消滅するどころか、時価総額1兆ドルを超える資産クラスに成長しました。企業や機関投資家がビットコインを保有し、エルサルバドルは法定通貨として採用しました。

もちろん、すべての予測が当たったわけではありません。しかし、本書が提示した「仮想通貨が金融の未来を変える」という大きな方向性は、確実に正しかったと言えるでしょう。

こんな方におすすめ

  • ビットコインの本質を経済学的に理解したい方
  • 中央銀行制度の問題点に関心がある方
  • 野口悠紀雄氏の著作を体系的に読みたい方
  • 歴史的文脈を踏まえて仮想通貨を学びたい方

『ブロックチェーン革命』と合わせて読むことで、野口氏の思想の全体像が見えてきます。2014年という早い段階で書かれた本書は、仮想通貨の歴史を学ぶ上でも貴重な資料です。

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