『サピエンス全史』レビュー──人類史から見る貨幣と虚構

『サピエンス全史』レビュー──人類史から見る貨幣と虚構

TL;DR

  • 7万年の人類史を壮大なスケールで描いた世界的ベストセラー
  • 「虚構を信じる能力」が人類の成功の鍵だったという革新的な視点
  • 貨幣も国家も企業も「共同幻想」──仮想通貨を考える上での示唆

著者:ユヴァル・ノア・ハラリ

人類史の決定版

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリによる本書は、2011年にヘブライ語で出版され、英訳版が世界的ベストセラーとなりました。7万年前のホモ・サピエンス誕生から21世紀の人工知能まで、人類の歴史を壮大なスケールで描いています。

学術的な厳密さを保ちながら、一般読者が読める平易な文体で書かれており、知的刺激に満ちた読書体験を提供します。

読んだ当時の感想

ビットコインを理解しようとしたとき、まず「お金とは何か」という根本的な問いに立ち返る必要がありました。この本は、貨幣が「虚構」であることを明快に説明しています。そして虚構であるからこそ力を持つという逆説的な真実も。

私がこの本を読んだのは、ビットコインの本質を理解しようとしていた時期でした。「ビットコインに価値があるのはなぜか」という問いへの答えが、この本にありました。

認知革命と虚構

本書の核心は「認知革命」という概念です。約7万年前、ホモ・サピエンスの脳に何らかの変化が起こり、「虚構を信じる能力」を獲得しました。神、国家、人権、法人──これらは物理的には存在しない「虚構」ですが、集団で信じることで力を持ちます。

この能力こそが、サピエンスが他の人類種を圧倒し、地球を支配するに至った原因だとハラリは主張します。

貨幣という虚構

本書で最も興味深い章の一つが、貨幣についての考察です。ハラリは、貨幣を「最も普遍的で効率的な相互信頼のシステム」と呼びます。金貨であれ紙幣であれ、それ自体には価値がありません。しかし、みんながその価値を信じているから、価値が生じるのです。

この考え方は、ビットコインの理解に直結します。ビットコインに「裏付け」がないという批判がありますが、円やドルにも同様の批判は可能です。価値の源泉は「信頼」にあるのです。

農業革命の罠

ハラリは、約1万年前の農業革命を「史上最大の詐欺」と呼びます。農業によって人口は増えたが、個人の生活は狩猟採集時代より苦しくなった。労働時間は増え、食事の多様性は減り、感染症が蔓延した。

この逆説的な視点は、「進歩」という概念を問い直させます。新しい技術が必ずしも人々を幸せにするとは限らないのです。

帝国と資本主義

本書は、帝国と資本主義という二つの力が、世界を一つに統合していく過程も描いています。ヨーロッパの植民地帝国は暴力的でしたが、同時に科学と資本主義という強力なツールを持っていました。

資本主義の本質は「未来への信頼」にあるとハラリは言います。未来の成長を信じて投資する──この心理こそが経済成長の原動力です。

科学革命と未来

本書の後半は、500年前に始まった科学革命と、それが開く未来について論じています。人工知能、生命工学、サイボーグ技術──これらが人類そのものを変える可能性を、ハラリは冷静に分析しています。

ビットコインやブロックチェーンも、この科学革命の延長線上にあります。技術が社会を変え、人間の行動を変え、最終的には人間そのものを変えていく──その壮大なプロセスの一部なのです。

仮想通貨への示唆

本書を読むと、仮想通貨を新しい視点で捉えることができます。ビットコインは「虚構」かもしれません。しかし、円もドルも同様に「虚構」です。違いは、どれだけ多くの人がその虚構を信じているかだけです。

仮想通貨が主流になるかどうかは、技術的な問題だけでなく、「信頼」をどれだけ獲得できるかにかかっています。

批判と限界

本書には専門家からの批判もあります。特定の分野について単純化しすぎている、証拠が不十分な主張がある、などの指摘です。確かに、7万年の歴史を1冊にまとめるには、多くの省略が必要です。

しかし、本書の価値は、個々の事実の正確さよりも、大きな視点を提供することにあります。細部にこだわりすぎず、全体像を楽しむ読み方がおすすめです。

続編について

ハラリはその後、『ホモ・デウス』(人類の未来)、『21 Lessons』(21世紀の21の教訓)を出版しています。『サピエンス全史』を気に入った方は、これらの続編もおすすめです。

こんな方におすすめ

  • 人類の歴史を大きな視点で理解したい方
  • お金や価値の本質を考えたい方
  • 仮想通貨を哲学的に捉えたい方
  • 知的刺激を求める読書家

分厚い本ですが、読み始めると止まらない知的興奮があります。ぜひ一読を。

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