2025年、ビットコイン価格は約1,680万円と高値圏で推移し、暗号資産市場への関心はますます高まっています。今年に入って最大の話題の一つは、かつて暗号資産に懐疑的だったトランプ前大統領が、ついにビットコインやその産業に寛容な姿勢を見せ始めたことです。かつては「ビットコインは詐欺に見える」と断じていたトランプ氏ですが、政界のダイナミズムを背景に、仮想通貨への理解と姿勢が大きく変化してきているのです。

　しかし、その一方で暗号資産市場は依然として高いリスクと隣り合わせです。2025年のChainalysisのレポートでも、暗号資産取引所に対するハッキング被害やサイバー犯罪のリスクは深刻な課題と指摘されています。これは、価値保存手段としてのビットコインの特性──自己管理でき、第三者のコントロールを受けない強み──と直接関係しています。つまり、自らが秘密鍵を保持し、取引所依存を最低限に抑えることが、ビットコインの本来の安全性と価値を最大化するコア戦略なのです。

　さらに、トランプ大統領による関税政策の変更や米国雇用統計の不振など、マクロ経済的な混乱が相次ぐ中、ビットコイン価格も短期的な調整を余儀なくされています。しかしこのような国家主導の政策や経済データの波動が、いかに不透明で一貫性を欠くものであるかを改めて実感させられました。オーストリア経済学の観点から見ても、国家や中央銀行の介入によって価値が左右されない通貨の必要性を説いており、ビットコインはまさに「金のアップデート版」として、その選択肢となりうる存在です。

　サイフェディーン・アモウス著『The Bitcoin Standard』でも述べられているように、ビットコインは金本位制の原則を現代に蘇らせる新しいマネーです。ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスやF.A.ハイエクといったオーストリア学派の大家も、国家の管理を受けない貨幣の重要性を繰り返し強調しています。価値保存手段としては、投機ではなく、長期的に安定した購買力を保てることこそが最も重要。自分自身で秘密鍵を管理できるビットコインは、国の政策変更や金融機関の状況に左右されることなく、自分自身の資産を守る「デジタル金庫」となりえるのです。

　国家や金融機関も徐々にこの新しいパラダイムを無視できなくなっています。政策や規制の歩み寄りは、逆説的にビットコインの価値と信頼性をさらに強固なものにしていくでしょう。その本質は投資ではなく、「価値を未来へと確実に引き継ぐための手段」です。激動する政治経済を背景に、今こそビットコインが社会に果たす真の役割に目を向けるべきではないでしょうか。

### 参考記事
Once a crypto skeptic, Trump is now a big fan of the industry | PBS
取引所が大規模な暗号資産ハッキングに備えるセキュリティ対策 | Chainalysis
Bitcoin, ether fall as President Trump modifies tariffs and jobs data … | CNBC

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