トランプの転向、ビットコイン高騰、そして今改めて問う「真の価値の保存」とは

 ここ数年の仮想通貨業界の動きの中でも、特に注目すべきニュースが5月、米国前大統領ドナルド・トランプ氏が「ビットコインと暗号資産業界の大ファン」と宣言したというものです。かつては「ビットコインは詐欺のようなもの」とまで発言していたトランプ氏の軌道修正は、単なる個人的な意見変化に留まらず、暗号資産の社会的・政治的立ち位置が大きく変化している象徴とも言えるでしょう。

 その裏付けとして、2025年6月現在、ビットコイン価格は1,552万円台と歴史的高値水準を更新しています。こうした価格高騰はもちろん投機的色彩も伴いますが、一方で、過去10年以上にわたりビットコインが価値保存手段として着実に定着してきた実態を反映しています。実際、インフレや市場の不確実性へのヘッジとして用いられる点は、金と比較される所以でもあります。

 しかし、ビットコインが「金のデジタルアップデート版」であるとする根拠は、それだけではありません。オーストリア経済学派のサイフェディーン・アモウス(『The Bitcoin Standard』著者)、ミーゼス、ハイエク、ロスバードらが指摘してきたように、価値保存手段は“政府や金融機関に依存しない自律的な通貨”であることが強く求められます。ビットコインは、そのプログラムによる透明性と、個人が自ら秘密鍵を管理できるという本質的な特長を備えています。これこそが、銃や金塊以上に「他者がコントロールできない資産」として機能する決定的な違いなのです。

 一方で、仮想通貨取引所を中心としたハッキング事件も後を絶ちません。2025年の最新犯罪動向レポートによれば、取引所の大規模ハッキングが依然として業界の課題であることが示されています。しかしこれは裏返せば、「唯一のリスクは取引所の第三者管理」だという事実でもあります。つまり、真に価値保存を志向するならば、「ビットコインを自ら管理する」―すなわち自己管理ウォレットやコールドストレージの活用―が不可欠なのです。

 さらに重要なのは、いまや国家や金融機関までもがビットコインを巡る法整備や投資参入を進めているという現実です。トランプ氏の支持表明や米国での立法動向は、まさに「政府×ビットコイン時代」の幕開けと言えるでしょう。これは国家による規制強化によってビットコインの独自性が失われるのではなく、「金のように、資産として地位を確立していく」プロセスだと考えます。長期的にはこの流れが、ビットコインの社会的・経済的意義、そして希少性価値をさらに押し上げることでしょう。

 まとめると、ビットコインは単なる投資商品ではなく、「価値保存のための最適解」としての役割を強めています。アモウスやオーストリア経済学派が説く“サイフの中の金塊”として、まずは自己管理の徹底と、長期の価値保存という観点でビットコインを見直してみることを強く推奨します。

### 参考記事
Once a crypto skeptic, Trump is now a big fan of the industry | PBS
取引所が大規模な暗号資産ハッキングに備えるセキュリティ対策
Bitcoin’s Price History – Cryptocurrency

*本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

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